2023 夏 六本木

好きだという気持ちは燃え上がる。今持っている好きの気持ち、尊敬の気持ち、全てを手向けたくなる。この気持ちひとつひとつに花が咲くとしたら、私の腕の中には抱えきれないおおきな花束ができているだろう。その気持ちを花の代わりにペンライトの光に預けて、ペンライトをひたすらあなたのいる方向に向けても伝わりきらず、ただただもどかしく、そのせいで溢れる声があった。好きとか愛してるより名前を呼びたくて、何度も名前を呼んだ夏だった。この名前を呼べる夏はあと何回なんだろう。今年は、限られた夏の1回を綺麗に使い果たした気がした。今は、この好きが続く限り、何回でも名前を呼びに行きたい。

 

あなたのことが好きだと、純度高く伝えたい。だからあなたが前髪を上げたとか、よく笑っていたとか、今日はあまり話さなかったとか、そんなことを羅列して「あれが好きだった」と過去形で話すことを辞めたかった。そのくらい今も、燃えるように織山さんが好き。一挙手一投足に目を落として全てを見届けていないと好きだと伝わらない気がしてしまうから、目を離すのが怖かった。態度で好きだと伝えたい。今目の前で、あなたが命を燃やしていること、あなたの前で、わたしが好きを燃やしていること、この両方が揃って私の好きが伝わる気がした。後からどんなに近い言葉を拾って文章にしたって、写し絵でしかない。

 

それでもやっぱり、目の前にいたあなたの少しの仕草だって覚えていたくて、インターネットにいくつも仕草や言葉を書き残す。あなたが目の前にいたことは、わたしがあなたの事を好きだという何よりの証明で、映像に残らないあなたがいくつもあることが、同じ時間を共有したしるし。あなたが好きだから私は大丈夫、と思える要素がいくつもある自分にとって、書き残すは生き残ること、それをコンスタントに行える幸せが身に染みたサマーステーション期間だった。

 

あんなに好きだったのにドラマの放送日すら把握しなくなってしまったアイドルに見守られる広場で、織山さんが選んだグアバは織山さんが選んだから美味しいのだと思ったりしながら、ジェラートを口に入れる。それは私の好きが燃え尽きないように、優しく体温を下げた。